こんばんは、山下真輝です。
古来より月は様々なのも語りに登場しています。
月にはうさぎが住んでいる
月には天女がすんでいる
そのような話を誰しも子供のころに聞いたのではないでしょうか。
月にまつわる懐かしい昔話をすこしだけ載せさせていただきます。
目次
月に行ったうさぎのはなし
むかしむかし、
サルとキツネとウサギ一緒にすんでいました。
3匹は、人間になりたいと考えていました。
そして、人間に生まれ変わるために、何かいいことをしよう!
と話し合っていました。
この話を聞いていた帝釈天(たいしゃくてん)は、3匹に
何か良いことをさせてあげようと思い、老人に姿を変えて3匹の前にあらわれました。
何も知らない3匹は、目の前にあらわれた老人がいいます。
老人:わしはとても疲れていて、おまけにおなかがすいて動けない。何か食べ物を恵んでほしい。
やっと人の役に立つことができる!
3匹は喜んで、老人のために食べ物を集めに行きました。
そこでサルは山へ、クリやカキの実をとってきました。
キツネは川へ行って、魚をつかまえてきました。
ところがウサギの食べ物は、やわらかい草です。
今は冬なので、やわらかい草は一本もありません。
(こまったなあ。どうしよう…?)
うさぎは一生懸命頑張ったのに、何も持ってくることができませんでした。
ウサギはガッカリして、サルとキツネのいるところへもどってきました。
サル:ウサギさん、きみのごちそうはどうしたの?
ウサギ:だめだよ。草はかれているし、木のめは、まだ出ていないんだ
サル:それじゃ、ウサギさんはいつまでも、ウサギのままでいるんだな
キツネ:そうだよ。ごちそうも持ってこないで人間に生まれかわりたいなんて、ウサギさんはずるいよ
ウサギ:ごめん…。でも、もう少しだけだけ待っていて
そしてウサギは山へ行くと、かれ木をひろい集めてきました。
そしてサルとキツネの前に、かれ木をつみあげて言いました。
ウサギ:今からごちそうを焼くから、火をつけておくれ
サルとキツネが火をつけると、かれ木はパッと燃え上がりました。
ウサギ:ぼくのごちそうはないんだ。だから、・・・だから、ぼくをおじいさんに食べさせておくれ
と、言うなり、ウサギは火の中に飛び込んだのです。
これを見た老人は、すぐに帝釈天の姿に戻り言いました。
帝釈天:サルもキツネも、きっと人間に生まれかわれるだろう。
なにしろ、自分の大切な食べ物を人間にごちそうしようとしたからね。
それは、とても素晴らしい事だよ。でもウサギ、君もまた素晴らしい。
自分をすててまで、人間に食べさせようとしたのだからね。
それにしても、うさぎには可愛そうなことをした。月の中に、うさぎの姿を永遠に残してやろう。
神さまにだきかかえられて、ウサギは空高くのぼっていきました。
その時からウサギは、お月さまのなかで楽しくくらしているという事です。
※うさぎが満月で餅つきをしているのは、
満月のことを「望月(もちづき)」というからだそうです。
かぐや姫
むかしむかし、竹を取って暮らしているおじいさんがいました。
ある日の事、おじいさんが竹やぶに行くと、
根元が光っている不思議な竹を見つけました。
おじいさん:ほほう、これはめずらしい。どれ、切ってみようか。えい! ・・・うん? これは!
おじいさんがその竹を切ってみると、なんと中には小さな女の子がいたのです。
子どものいないおじいさんとおばあさんは、とても喜びました。
そしてその子を『かぐやひめ』と名付けて、大切に育てたのです。
かぐやひめは大きくなるにしたがって、とても美しくなりました。
そして年頃になると、
「どうか、かぐやひめをお嫁さんにください」
と、若者がたくさんやってきました。
中でも特に熱心な若者が、五人いました。みんな、立派な若者です。
でも、かぐやひめは、お嫁に行くつもりはありません。
そこでかぐやひめは、困ってしまい、
かぐやひめ:では、私が言う品物を持ってきて下さった方のところへ、お嫁に行きましょう
と、言って、世にも珍しいと言われる品物を一人一人に頼みました。
五人の若者はそれぞれに大冒険をしましたが、
かぐや姫の望んだ品物を手に入れた者は一人もいませんでした。
なんとか五人の若者を追い返したかぐやひめですが、
かぐやひめのうわさはとうとうみかどの耳にも入りました。
なんとみかどまでもかぐや姫をお嫁さんに欲しがったのです。
みかどの言葉を聞いたおじいさんとおばあさんは、大喜びです。
お嫁にいくつもりのないかぐやひめは、何とか断ろうと思いましたが、
みかどに逆らえば殺されてしまうかもしれません。
それ以来、かぐやひめは毎晩毎晩悲しそうに月を見上げては泣いていました。
ある日、おじいさんとおばあさんが心配してわけをたずねると、
かぐや姫は泣きながら言いました。
かぐやひめ:実は、わたくしは月の世界のものです。今まで育てていただきましたが、
今度の満月の夜には月へ帰らなくてはなりません
それを知ったみかどは、満月の夜、
何千人もの兵士を送ってかぐや姫の家の周りを守らせました。
何とかして、かぐやひめを引きとめようとしたのです。
けれど真夜中になって月が高くのぼると、兵士たちは突然ねむってしまいました。
かぐや姫はその間に、月の使いの車にのって月に帰ってしまいました。
その事を知ったおじいさんもおばあさんもみかども、とても悲しんだと言うことです。
天人女房
むかしむかし、
あるところに、一人の若い木こりが住んでいました。
ある日の事、木こりは仕事に出かける途中で、
1匹のチョウがクモの巣にかかって苦しんでいるのを見つけました。
「おや? これは可哀想に」
木こりはクモの巣を払って、チョウを逃がしてあげました。
それから少し行くと、一匹のキツネが罠にかかっていたので、
「おや? これは可哀想に」
と、木こりは罠からキツネを助けてあげました。
またしばらく行くと、今度は一羽のキジが藤かずらにからまってもがいていました。
「おや? これは可哀想に」
木こりはナタで藤かずらを切り払い、キジを逃がしてあげました。
さて、その日の昼近くです。
木こりが泉へ水をくみに行くと、三人の天女が水浴びをしていました。
天女の美しさに心奪われた木こりは、泉のほとりに天女が脱ぎ捨ててある
羽衣(はごろも)の一枚を盗みとって木の間に隠れました。
やがて三人の天女は水から出てきましたが、
そのうちの一人だけは天に舞い上がるための羽衣が見つかりません。
二人の天女は仕方なく、一人を残して天に帰って行きました。
残された天女は、しくしくと泣き出してしまいました。
これを見た木こりは天女の前に出て行って、
天女をなぐさめて家へ連れて帰りました。
そして盗んだ羽衣は、誰にも見つからないように天井裏へしまい込みました。
そして何年かが過ぎて二人は夫婦になったのですが、
ある日木こりが山から戻ってみると、天女の姿がありません。
「まさか!」
男が天井裏へ登ってみると、隠していた羽衣も消えています。
「あいつは天に、帰ってしまったのか」
がっかりした男がふと見ると、部屋のまん中に手紙と豆が二粒置いてありました。
その手紙には、こう書いてありました。
《天の父が、あたしを連れ戻しに来ました。あたしに会いたいのなら、
この豆を庭にまいてください》
木こりがその豆を庭にまいてみると、
豆のつるがぐんぐんのびて、ひと月もすると天まで届いたのです。
「待っていろ、今行くからな」
木こりは天女に会いたくて、高い高い豆のつるをどんどん登って行きました。
何とか無事に天に着いたのですが、
天は広くて木こりは道に迷ってしまいました。
すると以前助けてやったキジが飛んで来て、
木こりを天女の家に案内してくれたのです。
しかし天女に会う前に、家から父親が出て来て
「娘に会いたいのなら、この一升の金の胡麻(ごま)を明日までに全部拾ってこい」
と、言って、天から地上へ金の胡麻をばらまいたのです。
天から落とした胡麻を全て拾うなんて、出来るはずがありません。
とりあえず金の胡麻探しに出かけた木こりが、
どうしたらよいかわからずに困っていると、以前助けてやったキツネがやって来て、
森中の動物たちに頼んでくれて、
天からばらまいた金の胡麻を一つ残らず集めてくれたのです。
木こりが持ってきた金の胡麻の数を数えた天女の父親は、
仕方なく三人の娘の天女を連れてくると、
「お前が地上で暮していた娘を選べ。間違えたら、お前を天から突き落としてやる」
と、言うのです。
ところが三人の顔が全く同じなので、
どの娘が木こりの探している妻かわかりません。
すると、以前助けてやったチョウがひらひらと飛んで来て、
まん中の娘の肩にとまりました。
「わかりました。わたしの妻は、まん中の娘です」
見事に自分の妻を言い当てた木こりは、
妻と一緒に地上へ戻って幸せに暮らしたということです。
お月様がみているよ
むかしむかし、あるところに、お父さんと男の子が二人で暮らしていました。
お父さんと男の子はいつも一緒でした。
仕事で山にいくときも、町にでかけるときも、2人は一緒です。
ある月夜の晩の事です。
町へ行った帰り道、ふと見ると、おいしそうなカボチャが横の畑になっています。
お父さんは、そのカボチャを男の子に食べさせてあげたくなりました。
そこで男の子に、
「今からかぼちゃをとってきて、食べさせてあげよう。でも誰にもみられないようにしないといけない。だれかがきたら、すぐに知らせるんだよ。」
と、言って、畑の中にかぼちゃをとりに入っていきました。
そのとたん、男の子が言いました。
「お父さん、見ているよ」
「えっ!」
お父さんはびっくりして、畑の中にかくれました。
でも、しばらくたっても誰もいる気配がしません。
お父さんは、畑から立ちあがって言いました。
「何だ、だれも見てないじゃないか」
すると男の子が、空を指さして言いました。
「ほら、見ているよ。お月さまがずーーーっと見ているよ」
空を見上げると、大きな満月が二人を照らしています。
「そうか、たしかに。お月さまが見ているな。・・・ありがとう、お月さま」
お父さんはカボチャを盗むのをやめると、男の子と手をつないで帰りました。
月の女神の恋
セレネーという月の女神がいました。
ある夜、女神は天から下界をながめていました。
すると、丘の上で寝ている美しい羊飼いの若者、エンデュミオンを見つけました。
セレネーエンデュミオンに恋をして、
天から下りると、そっとエンデュミオンに近づき口づけをしました。
目を覚ました彼は驚き、そして女神の美しさに恋に落ちました。
2人は、一緒にラトモス山で暮らすことになり、
数年後には二人には多くの子供もできました。
まわりからは幸せな毎日でしたが、セレネーの心にはある悲しみが育っていました。
永遠に老いずに、若くいる自分とは違い、
やがて人間の彼は老いて死んでしまう…
別れを思うとセレネーはとても悲しくなり、
とうとうセレネーは大神ゼウスに願いでました。
「どうか、エンデュミオーンを老いないようにしてください」
ゼウスは、セレネーのねがいを聞き入れました。
しかし、老いないようにはなっても、セレネーは”不死”を願い忘れたので、
エンデュミオーンは老いないかわりに、
永久に眠っていて、目をさますことがありませんでした。
セレネーは、夜ごと寝ているエンデュミオーンの元にかよい、寝顔をながめます。
「わたしは、永遠にあなたを見守っています、語り合うことも愛し合うこともできなくても、あなたが生きてさえいれば、それだけで幸せです」
こうして、女神セレネーは、毎夜愛のこもった月の光とともに
彼のそばに寄りそっているということです。